労働安全衛生研究
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調査報告
コロナ禍における精神科医療機関の職場のメンタルヘルス対策に関するサービスの実態調査
廣川 空美 藤吉 奈央子吉田 知克大平 哲也
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2024 年 17 巻 2 号 p. 119-125

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抄録

大阪府下の精神科専門医療機関において,コロナ禍による業務の増加,オンライン診療の提供,職場復帰支援(リワーク支援)サービス提供に関連する医療機関の要因を明らかにすることを目的に実態調査を行った.調査対象は,大阪府下の精神科専門医療機関615件であった.調査協力に同意の得られた173件から記入済み調査票を回収した(回収率28.1%).調査の結果,“オンライン診療の提供可能”は9.8%であった.コロナ禍による診察・相談対応が「増えた」という回答は53.8%で,「増えていない」や逆に「減った」という回答は39.9%であった.新型コロナ感染症罹患後の診察・相談対応が可能という回答は68.8%であった.コロナ禍の影響により業務が増えた医療施設においては,カウンセリングや職場復帰支援(リワーク支援)も含め多様なサービスを提供していることが示唆された.特にメンタルヘルス不調の従業員が受診する際に職場のスタッフの同席が可能であること(OR=5.14, 95%CI: 1.65-16.04),新型コロナ感染症罹患後の診察・相談対応が可能である場合(OR=5.23, 95%CI: 1.63-16.76)、業務が増えたという回答が多くなっていた.職場復帰支援(リワーク支援)サービスの提供が可能な医療機関でオンライン診療の提供が可能という回答が多かった(OR=4.03, 95%CI: 1.22-13.36).さらに,職場復帰支援(リワーク支援)サービスの提供には心理職者の在籍により可能という回答が多かった(OR=2.79, 95%CI: 1.11-11.52).産業医資格を持つ医師の在籍によって,職場のメンタルヘルスの相談や,「職場復帰支援に関する情報提供書」への対応,ストレスチェック実施の受託,ストレスチェック後の高ストレス者への対応などを可能としていることから,職場のメンタルヘルス対策に関わるサービスの提供につながることも示された.コロナ禍における精神科医療機関の職場のメンタルヘルス対策について,多様なサービス提供を可能にするためには,設備や人的資源の確保が必要であることが示唆された.

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