2024 年 17 巻 2 号 p. 105-111
実際の現場で使用されている微粉炭における自然発火リスクを評価するために,高圧示差走査熱量測定を行い発熱熱開始温度や発熱量を確認した.また,自然発火試験により発火までの誘導時間や,断熱型暴走反応熱量計を用いて熱暴走までの時間を推算した.これらの結果,微粉炭が酸化発熱によって蓄熱しやすいことや,微粉炭中にホットスポットが存在する場合,熱暴走までの時間が数分以内に発火し,異常時には火災の危険性が高いことが示唆された.
限界発火温度の試算をするために新しいアプローチとして,断熱型暴走反応熱量計(ARC)で測定した酸化発熱速度式を基にシミュレーションを行った.その結果,微粉炭が約200Lのスケールで堆積した場合の限界発火温度は約314Kと試算された.これは真夏において自然発火する可能性があることが示唆された.この一連の手法を参考に,微粉炭に限らず,自然発火性がある物質が堆積する場所での蓄熱発火危険性評価に活用できると考えている.