抄録
保護めがねは,簡便,安価であるが,さまざまな有害危険因子に対して目を確実に保護する.このため,作業現場では,多くの作業者が,保護めがねを着用している.我国で使用されている保護めがねのうち約半数が,金属製フレームの製品であると考えられる.金属製フレーム保護めがねは,ニッケルを溶出させ,ニッケルアレルギーのある作業者に対し,接触皮膚炎を引き起こす可能性がある.本研究では,我国で実際に使用されている金属製フレーム保護めがねのモデルについて,通常のめがねのフレームに対するISO規格の方法に基本的に従い,ニッケルの溶出量を測定,評価した.調査した金属製フレーム保護めがねの製品39個のうち,20個(51%)の製品のリム,および,11個(28%)の製品のテンプルから,規制値を超えるニッケルが溶出した.リムとテンプルの両方を考慮すると,保護めがねの製品39個のうち23個(59%)では,リムとテンプルの少なくとも一方から規制値を超えるニッケルが溶出し,不合格と評価された.我国の作業現場で使用されている金属製フレーム保護めがねからも,同様にニッケルが溶出すると考えられ,このニッケルが実際に接触皮膚炎を引き起こしている可能性がある.今後は,作業現場における金属製フレーム保護めがねの使用と接触皮膚炎の発生の状況を調査することが望まれる.