労働安全衛生研究
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2 巻, 1 号
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巻頭言
特別寄稿
原著論文
  • 榎本 ヒカル, 池田 耕一, 東 賢一, 栃原 裕
    2009 年 2 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    夏期における「クールビズ」実施オフィスの温熱環境条件およびその勤務者による性差を中心とした温熱環境評価の違いを明らかにするために,実測調査およびアンケート調査を行った.調査は2005年9月中旬に行われ,調査対象は東京都千代田区にあるオフィスビル及びその勤務者のべ84名であった.建物7階の執務室にて温熱環境条件の測定を行い,併せてそこで働く人を対象に着衣状況や主観的申告をアンケート形式で回答してもらった.その結果,今回測定されたオフィスにおける室温はおおむね28℃以下であった.勤務者の着衣状況はほぼ全員が軽装で,男性はジャケット着用者はおらず,ネクタイ着用率は1割程度であった.勤務者による温熱環境の評価については,女性はおおむね満足度が高いが男性は「快適」な人から「暑くて不快」な人まで様々であった.これは男女の着衣や代謝量,冷房に対する体質の違いに主として起因すると考えられる.また気温28℃におけるより快適な環境条件としてPMV=0.5となる条件の提言を行った.
  • 奥野 勉
    2009 年 2 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    保護めがねは,簡便,安価であるが,さまざまな有害危険因子に対して目を確実に保護する.このため,作業現場では,多くの作業者が,保護めがねを着用している.我国で使用されている保護めがねのうち約半数が,金属製フレームの製品であると考えられる.金属製フレーム保護めがねは,ニッケルを溶出させ,ニッケルアレルギーのある作業者に対し,接触皮膚炎を引き起こす可能性がある.本研究では,我国で実際に使用されている金属製フレーム保護めがねのモデルについて,通常のめがねのフレームに対するISO規格の方法に基本的に従い,ニッケルの溶出量を測定,評価した.調査した金属製フレーム保護めがねの製品39個のうち,20個(51%)の製品のリム,および,11個(28%)の製品のテンプルから,規制値を超えるニッケルが溶出した.リムとテンプルの両方を考慮すると,保護めがねの製品39個のうち23個(59%)では,リムとテンプルの少なくとも一方から規制値を超えるニッケルが溶出し,不合格と評価された.我国の作業現場で使用されている金属製フレーム保護めがねからも,同様にニッケルが溶出すると考えられ,このニッケルが実際に接触皮膚炎を引き起こしている可能性がある.今後は,作業現場における金属製フレーム保護めがねの使用と接触皮膚炎の発生の状況を調査することが望まれる.
  • 堀 智仁, 玉手 聡
    2009 年 2 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    基礎工事用大型車両系建設機械(以下,「くい打機」という)は,上部旋回体と下部走行体で構成される大型の建設機械である.毎年,この種の機械の転倒災害が数件発生している.原因の多くは設置地盤の支持力不足にあるが,その背景にはくい打機がトップへビーな構造を有しながら自走することと,この機械が設置される施工現場が軟弱であることの2つの要因がある.本研究では,くい打機の自走時不安定化メカニズムを明らかにすることを目的に,実機を用いた実大走行実験を実施した.実大走行実験では機体の3箇所に3成分の加速度計を設置して,直進およびカーブの2つの条件で走行挙動を計測した.その結果,走行時のくい打機の応答加速度には,長周期的な揺れが確認された.また,カーブ走行では応答加速度に増加が見られ,くい打機が不安定化した際の特徴的な傾向が計測によって明らかになった.
  • 山隈 瑞樹, 児玉 勉, 遠藤 禎行
    2009 年 2 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    グラスライニング(GL)反応容器におけるGL層の静電気による破損(ピンホール,剥離)を防止するには,撹拌帯電現象の解明が出発点になる.これを基本に,少量のサンプル(固液二相系スラリ)を攪拌することにより攪拌帯電現象を半定量的に推測する卓上型試験装置を開発した.この装置は,有効容積2 Lのガラス容器と攪拌装置および試験容器の側面と液面近傍に電界センサを取り付けたもので,攪拌中の各部の電界変化を観測することができる.模擬サンプルを使用して実施した実験の結果,例えば低導電率液体(ヘプタン,シクロヘキサン等)と非溶解性粉体(ポリプロピレン)からなるスラリの攪拌において,試験容器の位置によって電界の大きさおよび極性に著しい差異のあることが見いだされた.これは,攪拌中の液面近傍のみの電界測定では予測できない結果であり,実工程における静電気現象の解析および障災害の防止対策を講じる上で有効な手法となりうる.
  • 濱島 京子, 梅崎 重夫
    2009 年 2 巻 1 号 p. 33-44
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    産業安全分野では,労働災害の再発防止策を確立するために様々な分析手法が提案されている.しかし,複雑な手法は現場での活用時に負担となるだけでなく,手法の複雑さが制約条件となって原因究明を阻害する.そこで,出来る限り単純な方法によって労働災害の原因を究明する手法の検討を試みた.この代表例に,4M(Man, Machine, Method, Management)による基本原因の分析手法がある.しかし,著者らが首都圏で発生した死亡労働災害129件を分析した結果によれば,労働災害の基本原因には4M以外にも情報伝達や変更管理の不具合に起因する災害が各々6割以上を占めていた.そこで,従来の4Mと情報的要因に対する“なぜなぜ分析”に,変更管理の不具合に対する時系列(またはライフサイクル)分析を加えて,基本原因を抽出する手法を検討した.しかし,基本原因の抽出が常に本質的な災害防止対策の解明に結びつくとは限らない.そこで,基本原因の背後に潜在する根本原因を(1)倫理,(2)技術,(3)組織運営,(4)社会制度の視点から解明する根本原因究明手法の検討を試みた.これをBFIマトリックス解析による根本原因究明手法と呼ぶ.このときの技術的対策には,2006年に厚生労働省が公表した“機械の包括的安全基準”や,著者らが日本鉄鋼連盟とともに研究を進めている“ITを活用した安全管理手法”などが活用できる.また,変更管理に関連する技術的対策としては,機能安全分野(IEC61508など),品質マネジメント分野(ISO9000ファミリー)及びプロジェクトマネジメント分野(PMBOKなど)で開発中の方法を労働安全分野の変更管理まで拡張した支援システム(コンフィグレーション・マネジメントシステム)の構築が有効と推察される.
短報
  • 水谷 高彰
    2009 年 2 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    近年,オゾナイザー(酸素をオゾンにする装置)の開発により,10vol.%を超える高濃度オゾンガスが酸素ガスから直接,得られる様になった.前報では,オゾン濃度15vol.%以下,初圧1.0MPa以下の条件下における分解爆発限界濃度や最大爆発圧力,火炎伝ぱ機構とオゾン濃度,圧力の関係を実験から明らかにした.本研究ではオゾン濃度15vol.%以下,大気圧のオゾン/酸素混合ガスの最小着火エネルギーを測定した.最小着火エネルギーはオゾン濃度の増加にともない,指数関数的に減少し,オゾン濃度15vol.%近傍では10mJ程度となった.この値は,大気圧下、化学量論組成近傍のメタン/空気混合ガスの最小着火エネルギー0.2mJより大きい値であるが,可燃性粉じんの爆発における最小着火エネルギー1~300mJ程度から比較すると決して大きい値ではない.オゾナイザーの開発がさらに進み,15vol.%を超えて高い濃度のオゾン/酸素混合ガスが製造される様になれば可燃性混合ガスと同程度,もしくはそれ以上に着火危険性が高い混合ガスになることが示唆される.最小着火エネルギーの測定条件の検討のため,放電間隙を変えて14vol.%オゾン/酸素混合ガスの最小着火エネルギーを測定した結果,放電間隙3~4mmで最小値をとった.この結果は,消炎距離が2~3mmであるという以前の研究結果と符合した.
資料
技術解説
  • —レポーターアッセイの活用—
    鈴木 薫, 小泉 信滋
    2009 年 2 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    労働環境には極めて多数の産業化学物質が存在するが,それらに起因する健康障害リスクを回避するためには,化学物質が引き起こす健康影響を迅速かつ正確に評価することが求められる.しかしこのためには,現状の評価法の改善・効率化への努力が必要である.一方で,近年のバイオテクロノジーの発展から遺伝子への影響を指標とした新たなタイプの生体影響評価手法が現実的なものになり,化学物質の健康影響評価に寄与する可能性をうかがわせている.本稿では,その一つである「レポーターアッセイ」について解説する.
  • 小嶋 純
    2009 年 2 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    換気不十分な作業空間内での一酸化炭素中毒による労働災害は漸増傾向にあり,特に内燃機関の使用による中毒事故が目立つ.労働安全衛生規則では内燃機関の使用場所における換気の必要を明記しているが,現場では換気量と一酸化炭素濃度との定量的な関係が十分に理解されず,その結果,全体換気の効果が過信されるなど,依然として多くの現場で不適切な換気が行われていると懸念される.本報では換気による物質収支式に基づき,種々の気積を想定した作業空間内における一酸化炭素濃度の推移と換気量(換気回数)との関係を簡略化したモデル計算によって求め,作業空間内の濃度を天井値(200ppm)以下に保つために必要な換気量を試算した.
研究所通信
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