労働安全衛生研究
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原著論文
人間機械作業システムにおける危害の発生確率の定量的評価手法の提案
-英国HSEが示したリスク管理目標の達成手法に関する考察-
梅崎 重夫濱島 京子清水 尚憲宮川 高志
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2010 年 3 巻 1 号 p. 27-36

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抄録
英国HSEが示したリスク管理目標では,労働者一人あたりの死亡労働災害の発生確率を10-6回/年未満に設定している.しかし,この目標を達成するための一般的な方法論は必ずしも明確でない.そこで,人間機械作業システムにおける危害の発生確率をマルコフ解析に基づいて定量的に推定できる評価式を提案し,この式を基に前記目標の達成手法を考察し,次の結果を得た.1)目標の達成は,人の注意力に依存する管理的対策だけでは困難で,制御システムの安全関連部に対する異種冗長化及び自動監視技術の適用が不可欠である.2)人の注意力が期待できないときでも,所定の条件の下で,制御システムの安全関連部のセンサ及びプロセッサのチェック間隔を単一系のときは10-5h(約30msec)以内,異種冗長二重系のときは0.05h(3分)以内,異種冗長三重系のときは0.5h(30分)以内などとすれば目標の達成は可能である.3)保護方策を無効化する危険点近接作業では,上記目標は一般に達成できない.ただし,ALARPに関する目標値として死亡労働災害の発生確率を10-4回/年未満に設定したときは,設備的な保護方策と管理的対策の連携によって,この目標を達成できる場合がある.
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© 2010 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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