抄録
熱量計における熱伝導に起因する時定数補正について,反応熱量計であるCRCを例にとり,時定数の本質的な役割と,最適値を系統的に決定する方法を検討した.その結果,a)CRCにおいては補正データとキャリブレーション信号との間の二乗誤差が極小を示す参照間隔が存在すること,b)同じくCRCでは参照点数を増やすことで誤差は減るが分散として処理した場合には必ずしも減少しないこと,c)一次の時定数に対して参照間隔をあけることによって反応速度を過小評価する可能性があること,d)参照間隔を小さくすることでノイズは拡大することという4つの知見を得た.したがって,熱量計において時定数補正を行う場合には,サンプリングレートやデータ処理に用いた参照間隔等の明示が必要である.