労働安全衛生研究
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4 巻, 1 号
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巻頭言
特別寄稿
原著論文
  • 榎本 ヒカル, 澤田 晋一, 安田 彰典, 岡 龍雄, 東郷 史治, 上野 哲, 池田 耕一
    2011 年 4 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
    熱中症予防のためには水分摂取が重要であることが指摘されているが,その水分補給量の目安は明確に定められてはいない.そこで,ISO7933に採用されている暑熱暴露時の暑熱負担予測のための数値モデルであるPredicted Heat Strain(PHS)モデルに着目し,暑熱環境における水分補給量の違いが人体に与える影響を検討し,PHSモデルから算出される水分補給量の妥当性を検証した.健常な青年男性8名を被験者とし人工気象室を用いて水分摂取条件を3水準(無飲水,PHSモデルによる飲水,ACGIHガイドラインに基づく飲水),運動条件を2水準(座位,トレッドミル歩行)設定し,生理的指標として皮膚温・体内温(直腸温,耳内温),体重,指先血中ヘモグロビン濃度,心電図,血圧・脈拍数,視覚反応時間,心理的指標として温冷感に関する主観的申告,疲労に関する自覚症しらべを測定した.その結果,暑熱環境での作業時には飲水しないよりも飲水するほうが体温や心拍数が上昇しにくく,生理的暑熱負担が軽減されることが示唆された.また,PHSモデルによる体内温と体重の変化量の予測値と本研究での実測値を比較したところ,PHSモデルは作業時の水分補給の目安の一つになりうることが明らかになった.
  • 大塚 輝人, 熊崎 美枝子
    2011 年 4 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
    熱量計における熱伝導に起因する時定数補正について,反応熱量計であるCRCを例にとり,時定数の本質的な役割と,最適値を系統的に決定する方法を検討した.その結果,a)CRCにおいては補正データとキャリブレーション信号との間の二乗誤差が極小を示す参照間隔が存在すること,b)同じくCRCでは参照点数を増やすことで誤差は減るが分散として処理した場合には必ずしも減少しないこと,c)一次の時定数に対して参照間隔をあけることによって反応速度を過小評価する可能性があること,d)参照間隔を小さくすることでノイズは拡大することという4つの知見を得た.したがって,熱量計において時定数補正を行う場合には,サンプリングレートやデータ処理に用いた参照間隔等の明示が必要である.
  • 山隈 瑞樹, 泉 房男, 関根 武雄, 永田 久雄
    2011 年 4 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
    2009年以前,国内では静電気帯電防止靴はJIS T 8103:2001に準拠して製造されていたが,国際的にはIEC61340-4-3:2001が制定され,さらにこの一致規格(IDT)としてJIS C 61340-4-3:2009が制定された.これらは,特に測定方法に違いがある.国際規格への整合性を推進するわが国の国家的方針に従い,IEC規格を反映したJIS T 8103の改正を行うため,両規格の測定方法による数値を比較した.その結果,23℃の試験環境においてJIS T 8103:2001の測定法でも靴に印加する荷重をIEC規格の方法に合わせることによって,ほぼ同じ数値が得られることがわかった.次に,IEC規格には規定されていない0℃における測定結果から,靴の表底材料の温度特性を考慮すると0℃における抵抗の上限値を23℃における上限値の10倍とする必要があることが明らかとなった.さらに,製造業者が全数検査に使用する簡易的な測定方法で測定し,正式な方法との違いを検証した.これらの実験・検討結果は改正規格JIS T 8103:2010に反映された.
  • 高橋 弘樹, 大幢 勝利, 高梨 成次
    2011 年 4 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
    建設工事における墜落災害の対策として,平成21年3月に労働安全衛生規則が改正され,新たに墜落防止用の手すりや板(さん,幅木など),メッシュシートなどを足場に取り付けることが義務付けられた.これらの部材は,足場の1側面に取り付けることが多く,足場には偏った荷重が作用する.現在,足場に関する指針に示されている最大積載荷重などの値は,従来の足場を対象としているため,規則改正後の足場に対応するかは分からない.本論文では,足場の鉛直荷重を支える部材である建わくを対象として,偏心荷重を受ける場合の座屈解析を行い,その強度について検討した.また,偏心荷重を受ける建わくの座屈強度の計算方法を示し,数値解析と比較することでその計算方法の妥当性を検討した.この計算方法は数値解析の結果と良い対応を示し,その妥当性が確かめられた.さらに,偏心荷重を受ける建わくの座屈荷重は,偏心荷重の比率が大きくなるほど値が小さくなる結果が得られた.手すりわくなどを取り付けて足場を高く設置する場合は,偏心荷重の影響を考慮して設計した方がよいと考えられる.簡便な方法として,脚柱1本当りの部材重量を計算することもよいと考えられる.
短報
  • 小嶋 純
    2011 年 4 巻 1 号 p. 39-41
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
    実験室内に設けた溶接ロボット等を用いて,溶接作業場における粉じん対策を目的に開発された低ヒュームワイヤのばく露低減効果を検証した.溶接ヒューム,一酸化炭素,オゾンの各ばく露濃度を測定し,低ヒュームワイヤと従来型ワイヤとの比較を行ったところ次の結果を得た. (1) 低ヒュームワイヤは溶接ヒュームのばく露濃度を約5%低下,もしくは約25%増大させた. (2) 低ヒュームワイヤは一酸化炭素のばく露濃度を約15%~24%低下させた.(3) 低ヒュームワイヤはオゾンのばく露濃度を約25%増大,もしくは約75%低下させ,これらは統計的に有意であった.以上の結果より,低ヒュームワイヤのばく露低減効果は製品情報等から期待される程のものではなく,粉じん対策上あくまで補助的手段に留めるべきであることが示唆された.
調査報告
  • 崔 光石, 文 均太, 鄭 載喜
    2011 年 4 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
    最近,微粒子のコーティングおよび造粒技術は医薬品業界を始め,食品,化学関連の業界などへ広がりつつあり,流動層の需要が高まっている.流動層は日本では1950年代に導入され,かなり改良されているが,いまでも静電気によるトラブル,凝集,火災・爆発などの問題がある.本稿では静電界センサによる流動層における流動粉体の静電気帯電特性の連続測定評価について検討した.小規模流動層実験装置は流動塔,空気塔,流動エアー調節部などから構成されている.粉体試料はポリプロピレン2kgを用いた.その結果, 流動層における流動粉体の静電気帯電特性を評価する際に静電界センサが有効であることが確認された.しかし, 静電界センサ付近の壁に付着している帯電微粉の影響や下部流動塔の中に堆積している帯電粉体の影響を考慮する必要がある.
資料
  • — 静電気放電によるメタリック粉体塗料の着火性 —
    崔 光石
    2011 年 4 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
    平成18年の労働安全衛生法の改正により, リスクアセスメントの努力義務が明示され, 粉体塗装・塗料業界でも災害防止に向けて多くの対策や努力が行われている.塗装や塗料関係でのリスクアセスメントに必要となる基礎情報を提供することを目的として, 第1報に引きつづいて, 本稿ではアルミニウム顔料がメタリック粉体塗料の静電気放電による着火性に及ぼす影響について定量的に調べた.着火性測定には, 国内外で標準的に用いられている吹上げ方式着火試験装置を使用した.試料としては塗装現場では主流となっているドライブレンドタイプメタリック粉体塗料を用いた.結果によると, ドライブレンドメタリック系粉体塗料は数mJの小さい静電気放電エネルギーでも着火する危険性がある事が明らかになった.アルミニウム顔料の混合比が6wt%以下では, ドライブレンドメタリック系粉体塗料の着火性に著しい変化を与えない事もわかった.しかし, 混合比6wt%から8wt%の間に, 着火性が急激に小さくなるしきい値が存在することが確認された.
技術解説
  • 北條 理恵子, 坂本 龍雄, 黒河 佳香, 藤巻 秀和, 小川 康恭
    2011 年 4 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
    室内空気中の化学汚染物質による健康障害と考えられる,シックハウス症候群(SHS)と化学物質過敏症(CS)の発症や増悪には「におい」が関与することが報告されている.しかしながら,今までに室内空気汚染物質の健康影響を「におい」自体からとらえた実験研究はほとんどない.今後,労働衛生の重要な課題として不快な「におい」発生の予防と対策が必要である.我々は,職場で問題となる揮発性有機化合物(VOCs)および真菌由来揮発性有機化合物(MVOCs)の「におい」に焦点をあて,「におい」そのものが引き起こす健康影響を実験動物により検討する嗅覚試験法の確立を計画している.本稿では,近年問題となっている室内空気汚染物質による健康影響について解説したのち,嗅覚試験系の確立のため,我々が開発した基盤的な試験法を紹介する.
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