労働安全衛生研究
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原著論文
三次元粘弾性理論によるフランジ継手の応力緩和挙動の推定方法の検討
-ジョイントシートガスケットの場合-
山口 篤志辻 裕一本田 尚
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2011 年 4 巻 2 号 p. 63-70

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抄録

従来,既存化学工業施設の設備の配管継手部には石綿ガスケットが多用されてきたが,飛散した石綿繊維を長期間吸引すると,肺がんや悪性中皮種の発症が懸念されることから,ガスケットの急速な石綿代替化が進められた.継手部に使用されるガスケットは内部流体の漏えいを防止する最も重要な要素の一つであり,密封特性を向上させるために様々な非石綿ガスケットが開発されている.密封特性に及ぼす影響の一つとして,継手部の応力緩和挙動が挙げられる.応力緩和挙動は内部流体の漏えいを引き起こす可能性があり,内部流体の種類によっては大災害につながる.漏えいによる事故を防止するためにはフランジ締結体の応力緩和挙動の推定手法の確立が重要である.応力緩和挙動を推定するには,ガスケットのクリープ挙動を粘弾性構成式で評価する必要がある.これまで,ガスケットのクリープ挙動は粘弾性モデルにより評価されてきている.しかし,単軸の粘弾性モデルは圧縮方向以外の応力を考慮した構成式を得ることができない.そこで本研究では,ガスケットのクリープ挙動に三次元粘弾性理論を適用し,圧縮方向以外の応力を考慮できるガスケットの粘弾性構成式を得ている.得られた粘弾性構成式をJIS R3453 の試験装置を模した有限要素モデルに適用したところ,解析結果による応力緩和挙動と試験結果はよく一致する.三次元粘弾性理論から得られたガスケットの粘弾性構成式を有限要素解析で用いることにより,実使用条件におけるフランジ継手の応力緩和挙動を推定できることを示している.

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© 2011 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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