2022 年 42 巻 3 号 p. 115-124
肘尺側側副靱帯(UCL)損傷の治療は,保存療法が第一選択とされる.保存療法の抵抗因子として,内側上顆裂離骨片,骨片の不安定性,裂離骨片の遠位移動,尺骨神経障害,MRIでの靱帯完全損傷,浅指屈筋を収縮させても残存するring-down artifact,MRIでのUCL遠位損傷が挙げられる.これらの因子が組み合わさり,肘関節内側支持機構の重度の破綻がある場合,保存療法での競技復帰は難しい.器質的障害が軽度の場合,保存療法の適応があると考えている.全身の身体機能に加え,肘関節動的外反制動機能に対する介入を行うことが重要である.本稿では,UCL損傷に対する保存療法の限界,保存療法の実際について述べる.