抄録
脳出血発症後,約50年経過した事例は母と2人だけの閉鎖的な日常生活を送っており,過去に様々な福祉サービスを拒否した後,訪問作業療法を導入するまでに難渋した.約8ヵ月間,作業療法士は2人に対して傾聴と共感をしながら,提案と体験を繰り返すことにより,2人の価値観や思いを徐々に明確にすることができた.また,事例ができる活動を見出したことをきっかけに,事例が自らやりたい活動を表出するようになり,活動範囲と生活空間が広がり,母はその様子を見守るようになった.なぜ2人の行動が変化したのか,作業療法経過を振り返り,事例のできる活動と2人の言動から後方視的に分析し,訪問作業療法の効果について報告する.