抄録
要旨:今回,刑務所という制限が多い特別な環境下で,対人相互的反応の障害のある発達障害受刑者(以下,A氏)に対して,A氏の「思い」に寄り添った作業療法が実施できた.結果,出所までに必要な職業訓練や改善指導を受講し,改善更生の意欲や態度が大きく変わった.このような作業療法が展開できた要因として,作業療法士が医療職として個別で柔軟な関わりができたこと,作業療法でA氏の「思い」が表現しやすい方法を探索し続けたこと,作業療法士が医療職でありながら職業訓練や改善指導の担当者と連携しやすい部門に所属し,記録の工夫でタイムリーな情報共有ができたこと等が考察された.