作業療法
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Print ISSN : 0289-4920
巻頭言
論文投稿から掲載までの過程にある楽しみな瞬間
竹田 里江
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2022 年 41 巻 4 号 p. 389

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抄録

一昔前,論文を投稿し,査読を経て,アクセプト,掲載へとこぎつけるなかで,楽しみな瞬間が3回あった.一つ目は,査読結果を読むときである.時に厳しく,悩まされる指摘もあるが,見ず知らずの査読者が自分の論文を,ボランティアにもかかわらず丁寧に読み込み,吟味し,的確に示唆してくれる状況に,「なるほど,そこがポイントか」「薄々気づいていたけど丁寧に検討していなかった」など,納得感やありがたさを感じる瞬間がしばしばあった.また,査読結果を受け取った時点では感じなかった点も,その後に研究を進めたうえで改めて読み直すと「そういうことだったか」と唸らされることもあった.査読結果は論文投稿の過程で最も楽しみであり,かつ喜怒哀楽を感じる場面である.二つ目は,アクセプトされたこと自体であり,「掲載可」「accept」の文字を見ると思わずガッツポーズが出て,それまでの苦労も一気に吹き飛んだ.ただし,この喜びは一過性であり,予想よりもすぐに収まり,淡々と「次も頑張ろう」と冷静になる自分がいるのも興味深かった.三つ目は,原稿が論文のかたちに段組みされ,校正の段階になった際,体裁が整っていない部分,言い回しや文章に違和感がある部分に校正者が赤ペンを入れてくれた校正原稿を見ることであった.査読中の論文修正の際には,指摘されたことを直そうとするあまり,視野が狭くなっていることが多く,繰り返しの表現が多い場合,助詞や形容詞の位置や用い方に不備がある場合,さらに表や図の作成方法に不自然さや問題点があってもなかなか気が付かずに進めていることが多かった.しかし,校正の段階でそれを丁寧に指摘し,修正を提案してくださる赤ペンを見ることは,何より勉強になった.そして徐々に校正原稿の赤ペンを見ることが楽しみになった.同じ雑誌に次の論文を書くときには,顔を見たこともない,声を聞いたこともない,書面でしか交流したことのない校正者を思い浮かべながら,「こう書くべきだよな」「こう書いたら大丈夫かな?」「このままでは赤ペンだな,どう表現したらよいか」と,一つ一つ文章を吟味しながら書くようになった.こうした過程を通じて文章を“意識して書く”“吟味して書く”ことが身についたように思う.

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© 2022 一般社団法人日本作業療法士協会
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