抄録
本研究では,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて,医療観察法病棟の対象者が自身の入院処遇に対して抱く思いの変化のプロセスを明らかにした.医療観察法病棟に入院中の12名への半構造化面接の内容を分析した結果,入院処遇に対する複雑な思いを抱いていた対象者は,他の対象者や専門的多職種チームとの関わりを通して入院治療を受け入れ,退院時には普通の生活に対するあこがれを抱き,新たな自分を生きる決意を抱くに至っていた.また,司法精神科作業療法にてストレスを緩和し,自己効力感の高まりを経験することが,対象者の主体的な治療参加に作用していた.