作業療法
Online ISSN : 2434-4419
Print ISSN : 0289-4920
41 巻, 5 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
  • 務台 均
    原稿種別: 巻頭言
    2022 年 41 巻 5 号 p. 511
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2022/10/15
    ジャーナル フリー
    最近はどの学会の学術大会もオンラインかハイブリッド形式で開催されている.臨床に出ている身としては県外への移動は躊躇してしまうので,オンラインでの参加となる.いくつかの学術大会に参加してみて,移動の必要がなく,好きな時間に何度も繰り返し視聴できるというメリットを感じる.ただし,いつでも見られると思うとついつい後回しになってしまい視聴可能期限が迫ってくるので,頑張って平日のお昼休みに一人ランチョンセミナー的に視聴することが多い.参加する側は楽になった反面,開催してくださる方々のご苦労は想像に難くなく感謝の念に堪えない.コロナ禍前に学術大会へ参加していたときは,講演会,演題発表,機器展示,セミナーなど朝から夕方までめいっぱいスケジュールを詰め込み,夜は夜で交流をしてホテルへ帰れば寝るだけといったかなり過密な数日を過ごしていたように思う.ほんの数年前であるが懐かしく感じる.私の以前の学術大会の一番の楽しみはポスター会場で領域を問わずさまざまな発表を回って,発表者とお話をすることであった.いろいろな作業療法士と交流することで,視野が広がったり,自分の知らなかった評価や治療を知ることができたり,研究のヒントが得られることもあった.なにより意欲的に発表をしている方たちから,明日からの研究や臨床に取り組むエネルギーをもらえた.今これができないのはちょっと寂しい.
学術部報告
原著論文
  • ─TEAによる分析から─
    亀井 将太, 小林 法一
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 41 巻 5 号 p. 522-530
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2022/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,介護保険受給者が電動車いすの利用に至るプロセスを明らかにすることである.4名の対象者にインタビューを実施し,複線径路等至性アプローチを用いて分析した.結果,分岐点を経て,「これからも家族や社会とつながるための手段として電動車いすを利用する」という等至点に至った.そのプロセスで,“電動車いすを使うと歩けなくなる”という価値・信念が,“電動車いすは便利な道具”に変容した.周囲の電動車いす利用者からの情報は,さまざまな時期で対象者の電動車いすの利用を後押ししていた.本研究の結果から,他の電動車いす利用者からの情報提供など時期にあった支援を行うことの重要性が示された.
  • ─複線径路等至性モデル(TEM)を用いた分析─
    髙橋 慧, 中本 久之, 芳野 純
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 41 巻 5 号 p. 531-541
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2022/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,作業療法士がどのようなプロセスを経験することが職業的アイデンティティを高めることにつながるかを検討した.方法は,合目的的に抽出した作業療法士4名にインタビューを実施し,職業的アイデンティティの高い作業療法士がアイデンティティを確立するまでに,どのようなプロセスを経験したかを明らかにした.分析は,複線径路等至性モデル(TEM)を用いた.結果,キャリアの開始時には不安や理想と現実のギャップを経験したが,周囲からの外発的な要請に応える過程で作業療法への関心が高まっていき,職業的アイデンティティを強化していく過程が明らかとなった.
  • 黒川 喬介, 板倉 麻紀, 久保田 智洋, 神山 真美, 岡本 絵里加, 西田 典史, 堀本 ゆかり
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 41 巻 5 号 p. 542-550
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2022/10/15
    ジャーナル フリー
    潜在連合テストを用いて,作業療法学生に保持されている認知症患者に対する潜在的認知について検討した.その結果,作業療法学生は認知症患者に対してネガティブな認知が潜在的にも顕在的にも生じているものの,両者に相関はみられなかった.また,講義や臨床実習といった専門的教育によって潜在的なネガティブ認知はさらに高まっており,これには認知症によるBPSDが関与していると考えられた.これらから,学生にはすでに認知症患者に対するネガティブな認知が存在していることを前提に教育を始める必要があり,臨床実習前に認知症患者との関わり方や症状への具体的な対応方法を学習する必要があることが示唆された.
  • 森木 勇一郎, 池田 公平, 中村 拓人, 笹田 哲
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 41 巻 5 号 p. 551-558
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2022/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,介護老人保健施設で介護職と連携したクライエント支援のプロセスを作業療法士の立場から明らかにすることである.12名の作業療法士を対象者としてインタビューを実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにて分析した.結果,16の概念,7のサブカテゴリーを生成し,【連携するための基礎を作る】,【知識と技術を共有する】,【作業療法士と介護職が共通認識を持ってクライエントを支援する】の3つのカテゴリーが生成された.そこから,一方通行でない,カテゴリー間やサブカテゴリー間,概念間を行き来する介護職と連携したクライエント支援のプロセスが明らかになった.
  • 南 庄一郎
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 41 巻 5 号 p. 559-567
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2022/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて,医療観察法病棟の対象者が自身の入院処遇に対して抱く思いの変化のプロセスを明らかにした.医療観察法病棟に入院中の12名への半構造化面接の内容を分析した結果,入院処遇に対する複雑な思いを抱いていた対象者は,他の対象者や専門的多職種チームとの関わりを通して入院治療を受け入れ,退院時には普通の生活に対するあこがれを抱き,新たな自分を生きる決意を抱くに至っていた.また,司法精神科作業療法にてストレスを緩和し,自己効力感の高まりを経験することが,対象者の主体的な治療参加に作用していた.
  • 園田 悠馬
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 41 巻 5 号 p. 568-576
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2022/10/15
    ジャーナル フリー
    脊髄小脳変性症(SCD)の入院患者用に設計された集中作業療法(OT)の有効性について,症状の重複にかかわらず,上肢機能および認知機能が改善するか,後ろ向き研究で調査した.純粋小脳型10名と多系統障害型14名において,入院時と退院時に評価されたScale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)の上肢項目とTrail Making Test(TMT)を前後比較した.OT後,両障害型においてSARA上肢とTMTともに有意な改善を認めた.したがって我々のSCD用OTは,多系統障害の有無にかかわらず,上肢機能および認知機能に対する効果的な治療と推断する.
  • 高浜 功丞, 神保 和正, 吉村 友宏, 安森 太一
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 41 巻 5 号 p. 577-585
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2022/10/15
    ジャーナル フリー
    上肢機能評価バッテリーGRASSP(Graded Redefined Assessment of Strength, Sensation and Prehension)は,頸髄損傷者を主たる対象とした上肢・手指機能の評価ツールであり,既に海外では北米やヨーロッパを中心に脊髄損傷者の上肢機能評価に多く用いられている.この使用報告がほぼない本邦で,これを用いて脊髄損傷者の上肢機能の評価を行い,信頼性,妥当性,反応性について検証したところ,いずれも先行文献とほぼ同様の結果が得られた.また対象者のADL状況との関連を検証したところ,自助具箸の使用可否との間に有意な関係が示されることが確認された.
実践報告
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