本研究は,緩和ケア病棟入院患者の転倒時の最も高いレベルの動作の傾向と転倒に至る行動の動機を検証し,患者の安全と尊厳のバランスを考える一助とすることを目的とした.対象は緩和ケア病棟に入院した患者392名であった.非転倒群と転倒群の動作能力をJohns Hopkins Highest Level of Mobility Scaleで評価した.転倒群における転倒時の最も高いレベルの動作は移乗可能レベルであった.転倒に至る行動は排泄が最も多かった.医療者と患者が,早晩訪れる活動範囲の狭小化やADLの低下を見据えた話し合いの機会を設けることで,患者の自律した療養生活を支えることができると考えられた.