自分は合理的で正しい判断をしていると誰もが信じている.しかし,さまざまな要因によって無意識のうちに判断が歪むことがある.認知バイアスとして知られる認知・判断のバイアスは,いまでは100種類以上もあるとされる.経験を積めば,そのようなバイアスが減少すると考えるかもしれないが,むしろ経験を重ねたほうが顕著になるバイアスも存在する.日常のみならず治療の場面でも生じる認知バイアスを軽減するには,まず自身の判断は,簡単に歪められてしまうことを理解することである.このような自身の認知や知識の状態についての認知(=メタ認知)を涵養することが認知バイアスから逃れる第一歩である.