本論は、天正 15年・京都の微視的景観の復原を通じて、歴史的都市における高密度化の過程を捕捉した。街区の細分化の程度やたて込みの程度にばらつきがある、多様な景観を復原的に得た。通時的な傾向として、漸進的に高密化が進行していく過程が見通された。個々の場所による多様性は、この高密化の進行過程における諸段階の違いである。まず、ある疎らな場所でたて込みが増強する。たて込んだ《物》に対する権原が、その設置場所である土地にもおよぶ。たて込みは土地の細分化を促す。細分化された土地の面的な広がりが都市域の形成である。つまり、都市は家々が《物》を増やしていくことによって密度を高め、面積を広げていった。すなわち、この高密化の起点として、家があった。本論は、歴史的な都市域の形成の核として、家を見出した。