抄録
本研究は、総合設計制度に着目して、容積率割増しの運用の実態を分析するとともに、その効果及び合理性を検証することを通じて、容積率割増しをインセンティブとした建築規制手法のあり方等について考察するものである。このため、主要な特定行政庁における許可基準等を分析した結果、割増容積率の算定は、公開空地の整備状況に関連付けられた部分と、これとは独立に、特定の施設整備に対応する部分とに分かれ、後者については、公益施設等について、その床面積相当の容積率割増しを行う場合が多く、また、特定行政庁によって対応には相当の幅があることが判明した。次に、公益施設等に着目した容積率割増しの合理性を検証するため、ヘドニック法を活用して、対象施設の外部効果について分析したところ、その外部効果の影響の範囲や表れ方には様々な類型があることが推定された。例えば、歴史的建造物は近隣の比較的限定された区域内で、明確な正の外部効果を示すが、一定広がりのある地域内において集積していることにより正の外部効果を示す施設も存在すること等の推計結果が得られた。