抄録
近年わが国において、人口減少社会へと移行しつつある中、中心市街地のみならず郊外部からの都市活動の撤退という問題に着目が必要となっている。そして、それら都市活動撤退パターンによっては、空間利用や基盤整備の効率がさらに悪化したり、環境負荷が増大したりする可能性がある。しかし、それらパターンは、長期的にミクロな視点から実態が明らかにされてきたわけではない。本研究では、市街地形成時の整備手法が異なる複数の郊外市街地を対象に、住宅地図を用いたミクロな視点で経年的に都市撤退の実態を分析した。その結果、スプロール開発が蚕食型のパターンを有していたように、都市撤退も蚕食型の撤退パターンを呈していることが明らかとなった。それら撤退パターンを、ここでは「リバース・スプロール」と命名した。そして、「リバース・スプロール」は、スプロール型地区において顕著に発生する傾向があり、基盤整備が進んだ地区においては、都市活動の撤退が発生しても、その跡地が再利用される割合は非常に高いこと、さらには一体的に整備された地区は、その後の開発、撤退ともに現段階では少ないことなどを明らかにした。