抄録
本研究は、これまで国土計画と観光政策との間で十分な調整がなされてこなかった反省から、今後の方策への知見を得るため、逆説的な見地に立って、戦後国土計画と観光政策の策定過程、両者の関係がどのように変遷してきたかを明らかにした。特に、国土計画と観光政策が結合した事例である大規模観光レクリエーション基地開発に着目し、また、両者の調整がうまくいかなかった理由を考察した。実証的な分析の結果、大規模観光レクリエーション基地開発の「選択と集中」を巡り、国土計画と観光政策を整合することが必要であることを細部まで理論的に提示し得なかった計画論的問題、および実質的な整合を阻む縦割り行政の問題が明らかになった。この国土計画と観光政策の融合の頓挫は、以上のような計画論および行政組織上の要因が大きく、この結果、石油危機等の社会情勢ともあわせて、計画の実現を阻んだと考えられる。こうした経験を踏まえ、戦後国土計画と観光政策の融合を阻んできた“縦割り”を乗り越えられるような空間整備の制度設計が望まれる。