2008 年 43.3 巻 p. 181-186
本研究では、まず東京近郊における伝統的地縁組織から町会への変遷過程を明らかにする。次に地縁組織の活動、組織形態とその区域との関係を詳細に分析する地区として、十条地区、東向島地区、鹿浜地区の3地区を選定し、境界、地形、鎮守、地域活動に着目することで、地縁組織の活動、組織形態とその区域との関係を明らかにする。本研究の結論を以下に示す。十条地区では、伝統的地縁組織の境界や活動における特徴が、市街化や戦時期に行われた東京市町会整備によって失われてしまった。他の2地区では市街化や東京市町会整備があったにも関わらず、境界、鎮守、地域活動が組織変化の抑止力になった。このような過程を経ることで、地域空間と地縁組織の変遷過程の関係が、現在の町会の特徴に継承されているのである。