抄録
本稿では、1999年の独立時に暴動を経験した東ティモール共和国を事例として、世帯レベルでのフードセキュリティーの水準に影響を与える諸要因を定量的に解明することを主たる目的とした。この目的を達成するために、本稿では世界銀行(World Bank)が2001年に実施した世帯調査の個票データを用いて分位点回帰を行なった。その結果、暴動等を契機とした親戚・友人の受け入れや暴動による住居被害は、世帯レベルでの食料摂取状況を大幅に悪化させることが明らかとなった。その一方で、ソーシャル・キャピタルや家畜・家畜生産物の自家消費は世帯レベルでの食料摂取状況にプラスの影響を与えることが確認できた。こうした分析結果を踏まえると、社会経済的に脆弱な地域において、世帯レベルでのフードセキュリティーを向上させるには、既存のコミュニティーグループへの参加や自家消費を目的とした家畜飼養の奨励が効果的であると考察できる。