抄録
本研究は、高齢者通所介護施設利用における自宅から施設までの送迎の実態を詳細に把握、送迎上の移動環境の課題を、送迎車両と施設、送迎車両と利用者自宅間の建築・道路などの物理的バリアといったハード面と、高齢者通所介護施設の介助職員の有無や利用者の要介護度といったソフト面の両方から分析し、今後の改善指針を得ることを目的とした。その結果、(1)一方通行の道路に面したり交通量が多い道路に面したりする住宅では、敷地内に乗降スペースがなければ乗降が非常に危険であり、かつ多くの乗降時間を要するため、乗降場所としての適切な駐車スペースが必要であること、(2)歩行が可能な場合は短時間で移動できる場所でも、歩行に介助が必要な場合には移動に長時間を要することがあるため、利用者の住宅の出入りのバリアフリー改修は不可欠であること、(3)家族の支援は、送迎のスムーズな遂行に大きな役割を果たしているが、今後は単身高齢者が増えることも予想されるため、施設側への人員配置だけでなく、既存の集合住宅を対象とした住宅側での送迎支援サービスの充実が望まれること、等の知見を得ることができた。