抄録
現在京都市では伝統的建造物群保存地区をはじめ、京町家を保護するいくつかの制度が設けられている。一方で、京町家の建築技術の継承が問題となっており、その背景には既存不適格規定による職人の技術継承の場の喪失がある。近年京都の職人グループによって、技術の再生に一定の成果を挙げているが、依然町並み保存地区以外では京町家の開発が進められており、限られた京町家での活動は厳しいといえる。こうした伝統的な建築技術の衰退は全国的な課題であるが、その中で大工の技術を活かす場を新たに作り、技術を活かした活動を展開している取組みがある。本研究ではそうした取組みの実態を分析し、技術継承への課題を指摘するとともに、技術継承に貢献するまちづくりの方法論を提案し、京都市への適応可能性を検討することを目的とする。