抄録
大都市圏において計画的な農地保全を進める際には、既に土地利用が混在しているという特性から、農地だけでなく、農地に隣接して立地する住宅や商店などの建物立面との関係を考慮する必要がある。大都市圏の農地景観に関する研究は、メッシュを用いたマクロな研究や、ミクロなものでも評価手法研究として実験的に数地区を取り上げたものが多く、農地と隣接地との関係性が明確にされないまま農地景観の議論がなされている。そこで本研究では、農地と隣接土地利用との境界線(エッジライン)に着目し、エッジラインの長さやそれを構成する土地利用の特徴を把握することで、農地とともに景観構成要素となる隣接地の建物立面の状況を踏まえた農地景観の特性を把握することを目的とする。エッジライン分析により、農地景観を隣接する建物立面との関係から定量的に把握できた。周縁部では、主に住宅地と隣接する農地が全体の半数以上である。また隣接地の建物立面積を分析することで、市街化区域内で主に住宅と隣接する農地が、周囲を建物で壁の様に囲まれている状況や、市街化調整区域における流通、福祉施設等の開発が景観に与える影響を定量的に把握することが可能となった。