抄録
本研究では、1970年代初頭のディスカバージャパンキャンペーンを契機に早くから観光地化し、わが国を代表する歴史的町並み観光地である岡山県倉敷市を対象に、より具体的には、同市の重要伝統的建造物群保存地区を中心としたエリアに関して、次の3点1、町並み観光地はどのように発展してきたのか。2、町並みの保全や観光地化について、住民等はどのような意見を持ち、それがどのように変遷してきたのか。3、1と2にはどのような関連があるのか、を明らかにするものである。その結果、以下の3点を明らかにしている。(1)倉敷の観光の発展過程は5期に時代区分された。(2)「町並み保全」には、観光客の増減にかかわらず通期でほぼ賛成意見であり、増加期には、景観悪化への懸念が現れるが、減少・停滞期には、事業者の規制への不満や、伝建地区住民の住みにくさへの不満が現れる。(3)「観光振興」には、観光客減少が続くと減少を懸念する意見が現れ、観光地化・俗化を懸念する反対論調は増減にかかわらず常に登場し、住民は市政の観光偏重に対し批判的である。