2019 年 21 巻 2 号 p. 93-111
横断測線法による河川環境要素の計測では,労力と計測値の信頼度を考慮しながら適切な測線間隔を決定することになる.本研究では,小河川の 7 区間において 25 cm 間隔(<0.1 × 水面幅)で計測された水面幅,水深,流速のデータを用いて(それらを真値とみなして),横断測線間隔の粗さに伴う計測信頼度の低下を検討した. 25 cm 間隔で計測されたデータを基礎に,測線間隔を変えた数値を算出することによって,それによる信頼度の違いを検討した.想定した測線間隔は,水面幅の 0.25 倍,0.5 倍,1.0 倍,1.5 倍,2.0 倍 および 3.0 倍の 6 とおりであり,測線間隔の増大に伴う(1)計測誤差の増大,(2)計測値と真値との相関係数の低下,および(3)真値による頻度分布と計測値による頻度分布との差異の増大の 3 点から検討した.また,(4)文献調査により,既存研究で用いられている測線間隔についても検討した.文献調査の結果,河川区間間および河川区間内での環境変異を対象とした既存研究のそれぞれ 70%以上が,2.0 幅倍以下,および 0.5 幅倍以下の測線間隔を用いていた.誤差,相関および頻度分布に関する検討結果より,調査区間の水面幅,水深,流速の平均値を変数とする場合,0.5 幅倍の測線間隔を用いれば十分な信頼度であり(誤差 10 %以下,真値との相関 r はほぼ 1.0),また,1.5 幅倍程度までは比較的高い信頼度(誤差は概ね 15%以下,真値との相関 r>0.95)が期待できると考えられた.しかし,水面幅,水深,流速の区間内変異を表すこれらの標準偏差では,平均値の場合よりも測線間隔の粗さに伴う信頼度の低下は大きく,標準偏差(ばらつき)を変数として用いる場合には,より短めの測線間隔にすべきことが示唆された.また,魚類の生息場所利用を検討するような河川区間内での環境変異を対象とする調査では,測線間隔は理想的には 0.5 幅倍以下,粗くても 1.0 幅倍程度の狭さが必要であることが示唆された.