抄録
本研究では住民の防災対策行動を、防災行動に関する意思決定構造の観点から解明すべく、AHPの概念に基づき定量的な分析を試みた。特に、定量的に把握することの難しい防災意識に着目し、災害による多様な被害を考慮し、多目的な行動であると仮定した上で安全な都市の形成や集合的な選択について議論した点が本研究のオリジナリティと言える。これにより、耐震補強や地震保険、家具の固定などの防災対策に関する重要度を定量化することが出来たのに加え、生命や被災後の生活よりも金銭的負担を重要視するグループは高齢者率が低く、古い住宅に住んでいること、それらよりも対策に関する情報収集や手続きなどの手間を重要視するグループは地震災害に対する不安が極めて低い世帯であることなどがわかった。