2008 年 43.3 巻 p. 775-780
本研究では、コールバーグの道徳性活性化理論をもとに、児童に「道徳的葛藤」を体験させることを意図して、交通をテーマとした二つの授業を紹介するとともに、その授業による児童の態度変容効果を計測し、規範活性化理論の枠組みで分析を行った。その結果、授業実施前後で児童の交通問題に対する態度変容が示されたほか、葛藤を体験した授業は、その内容によって、異なる心理指標を有意に活性化していることが示された。具体的には、秦野市での「葛藤」授業は車を抑制すべき、という道徳意識を有意に活性化し、交通すごろくは公共交通を利用すべき、という道徳意識を活性化していることが示唆された。これは、それぞれの授業意図と合致しており、授業内容の妥当性を示すものと考えられる。