抄録
中国における近代のリゾート計画思想の展開を明らかにするために、20世紀初頭に整備された大連星ヶ浦海浜リゾートについて、計画思想、立地の特性、整備過程、利用状況、景観分析等を行い、その特質を明らかにした。計画思想の観点からは、星ヶ浦リゾートは、満鉄の地域経営施策として整備に着手された。立地特性からは、海岸の背後に丘陵がせまり、俯瞰景が優れており、かつ、海岸線は半島状の岩礁により領域感のある砂浜が弧状に連続していたことが、当該リゾート地の最も大きな景観特性であった。景観分析を行い、それぞれ特色を有する5つの景観ユニットを導きだすことができた。すなわち、半島景観ユニット、海浜景観ユニット、平地広場景観ユニット、平地リゾート景観ユニット、山麓景観ユニットである。歴史的経緯の分析から明らかになったことは、この中国における最初の近代リゾートは、地域の自然環境、地形的条件を深く読み込み、周到な景観計画が導入されたことに、最大の特色があった。