2012 年 47 巻 3 号 p. 325-330
少子高齢化、モータリゼーションの進展等により、地方鉄道の経営環境は極めて厳しく、多くの地域で存廃をめぐる議論が行われている。本研究は樽見鉄道を事例とし、沿線住民へのアンケート調査から、存続に不可欠な自治体からの財政的支援の必要性に関する合意形成に向けた課題を考察するものである。分析の結果、財政的支援に対する住民の賛否態度への影響要因として、鉄道事業者の経費削減努力に関する理解度、鉄道が実施している施策の認知度と鉄道まちづくりに関する評価、現在の交通手段と鉄道の移動手段としての役割に関する評価、そして鉄道の必要性に関する公共的意識が挙げられることがわかった。今後は、樽見鉄道の施策・経費削減状況、そして樽見鉄道が地域にもたらす便益等に関する客観的データを共有した議論が必要と考えられる。