2017 年 52 巻 3 号 p. 1088-1093
東日本大震災後、国の復興事業の復興土地区画整理事業が津波被災地で導入されているが、実需との乖離が課題となっている。本研究では時間経過に伴う住民の居住形態や意識の変化プロセスが空間形成へ及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。岩手県釜石市において約40%が事業実施区域の地区を主な分析対象とし、住民への聞き取り調査とアンケート調査、文献調査、現地調査、市役所担当課へのヒアリング調査、GISを用いた空間分析を実施した。対象地区では震災の約2年後に土地区画整理事業が都市計画決定された。事業区域内に居住していた世帯のうち2016年2月時点で元の場所に居住している世帯は14.0%に留まり、24.0%が他の場所へ再建を終えていた。区域外に居住していた世帯のうち2016年2月時点で元の場所に居住している世帯は88.2%を占め、他の場所での再建世帯は存在しない。事業の影響がないと判断した時点で自宅再建を決めた世帯が増えた。高齢化が進む地区だが、居住選択は殆ど年齢による有意差は見られず、事業実施区域や決定タイミングが居住選択に大きな影響を及ぼしていると考えられる。