抄録
本研究では,交通系ICカードデータの新たな分析手法として非負値テンソル因子分解に着目し,その適用可能性を検討することを目的とする.具体的には,香川県高松市において運行されている鉄道路線「ことでん」で利用可能な交通系ICカード「IruCa」の2013年12月1日から2015年2月28日までの15ヶ月分の乗降履歴データに非負値テンソル因子分解を適用し,乗車時間帯,利用者区分,乗車駅,降車駅を同時に考慮した利用者の移動パターンの抽出を試みる.分析の結果,非負値テンソル因子分解を適用することによって594,880要素を持つ組み合わせ(移動パターン)を48要素に絞り込むことができ,情報量を圧縮することができた.さらに,抽出された48要素の移動パターンの特徴を考察することによって,どの時間帯にどのような利用者がどの駅からどの駅へ移動したのかという特徴的な利用者の移動パターンが把握できた.