2018 年 53 巻 3 号 p. 1377-1384
台湾は二輪車中心の私事交通が発達しており、公共交通分担率は低いレベルにある。中央政府では公共交通システムを再定義し、BRTやLRTといった公共交通システムを積極的に推進している。淡海地区では高雄に次いで二番目のLRTが建設中であるが、最初の計画から事業計画の最終承認までに21年間を要している。本研究では、新たな公共交通システムを導入するにあたりどの公共交通システムを採用すべきかの意思決定プロセスを解明すること、LRT決定後のルート選定・構造形式選定といった路線計画の検討ポイントを整理し、その経緯を明らかにすることを目的とする。淡海では、MRT、LRT、BRTの導入が比較・検討された経緯があり、最終的にLRTが選定された。その意思決定プロセスでは、(1)台湾の公共交通政策による誘導が大きな影響を及ぼしていたこと、(2)道路空間などの物理的な制約や投資対効果といった経済性などが重要なポイントであったこと、(3)建設コストのみならず、利便性や景観といったポイントの評価を重視していること、等が明らかとなった。今後、わが国の都市がLRT導入を推進する際にも一つのモデルとなる事例と考えられる。