東京電力福島第一原子力発電所事故による被害を受けた福島県は,避難指示区域の解除が進みつつある一方で,地域公共交通の供給制約の現状や旧避難指示地域のモビリティ確保に求められる視点が必ずしも明確に整理されているとは言えない状況にある。本研究では,福島県内の乗合バスおよびタクシー事業を対象に,原発事故被災地に特有な供給制約の現状を整理したうえで,南相馬市をケーススタディとして,避難指示解除前後における,公共交通サービスが担う役割の変化を捉えた。また,同市小高区をモデルに,供給制約の緩和との両立が可能なモビリティの形態として,タクシーの相乗りサービスに着目し,原発事故避難地域への適用可能性を検討した。