抄録
本研究の目的は,今後,急速に高齢者人口が増加すると予測されている東京近郊一都三県におけるコミュニティ交通に関する政策とコミュニティ交通路線の事例の実態を明らかにすることである。特徴的な事例のみならず,網羅的に実態を把握するために、対象地域の全自治体(島嶼部除く)に対し質問紙調査を行い,分析を行った。主な結論は次のとおりである。第一に,コミュニティ交通をサポートする政策があるのは19自治体と全体の1割強にとどまっていた。第二に,交通事業者が運転する事業者運転型コミュニティ交通の赤字補填について,本格運行時の赤字補填を全くしない自治体から,赤字額の5割までを負担する自治体,予算の範囲内で対応する自治体など大きな幅があった。第三に,住民が運転手となる住民運転型コミュニティ交通においては,地域の実情に応じた多様な運行方式があった。これらの結果から,今後,新たにコミュニティ交通を導入する自治体にとって,サポートの仕組みや運行のあり方の検討のための基準となる有用な知見を提供できた。