抄録
本稿では,OD表から各地域の特徴を把握するための可視化手法を提案する.人々が目的地を決定する際には,距離などの空間的な近接性を考慮して意思決定を行っている.そこで,重力モデルのように距離のデータを用いずに,OD表から地域間の関連を分析することは興味深いテーマである.本稿では,OD表の行同士の類似度に基づき,類似度が高い地域同士を近くに,類似度が低い地域同士を遠くに配置することで,データを可視化する問題を定式化する.この手法を,47都道府県から7つの国立大学への進学実績のデータに適用し,各大学への進学傾向の類似度から都道府県を平面上に表示する.得られた配置結果は,日本地図に類似しておる.実地図との対比を通じて,OD表から直接読み取ることが難しい地理的な知見を得ることに成功した.さらに,地域間の進学傾向に基づく類似度行列を用いて,メディアン問題を解くことにより,47の都道府県を指定された数のグループに分割する問題を扱った.提案手法は,地域の大域的な構造と地域間の局所的な関連を可視化し,データの地理的な特徴を理解する有効な手法であることが確かめられた.