抄録
本研究は日本の都市における社会経済的な居住者特性と近隣生活施設へのアクセシビリティとの関係を明らかにすることで,空間的観点から社会的公平性について検討することを目的とする.対象地域として、社会経済的な居住分化が顕著な大阪都市圏を選んだ.第一に,複数の公共・民間の生活近隣施設へのアクセシビリティが各施設への最近隣距離によって計測されたが,米国でみられたような居住者の社会経済的水準の高さとアクセシビリティの良さとの相関関係は一律には支持されなかった.しかし,両者の関係は施設の種類や地区の人口密度によって変化することが明らかになった.第二に,主成分分析やクラスター分析を併用し,地区のアクセシビリティを総合的に評価することで,その地域的なパターンが可視化され,地区の社会経済的水準が低くアクセシビリティも不便な地域の存在も明らかになった.