全国的に著名な棚田に比べ、大多数のその他では価値付けや保全活動の後押しが担保されにくい状況を踏まえ、本研究は、県レベルでもローカルな棚田を価値付けし、保全活動を推進できるのかを課題と共に明らかにすることを目的とする。対象は、県内の棚田を審査し選定する事業を行った6県とする。まず、各県の事業を比較分析の中で特徴がみられた岐阜県の棚田保全施策の変遷を追う。次に、事業で審査された各地域の保全活動の実態と展望をアンケートから明らかにする。価値付けと保全組織設立に関係がみられた4地域については、活動の展開と要因をヒアリングから分析する。その結果、(1)棚田選定事業は保全活動の推進を主目的としながら、岐阜県では保全が進んでいない地域に活動を普及する意図もみられた。(2)岐阜県では、価値付けを機に各地域の保全組織設立が促された。(3)県に登録した組織がある地域では、連携意欲や行政への期待を持っており、中には全国的な知名度がなくとも価値付けを機に保全活動を展開し、大手企業との協働を始める地域もみられた。(4)価値付けに加え、既存の組織の活用、補助金の持続、地域外組織とのマッチング支援の重要性が示唆された。