都市計画論文集
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市街地における環境用水水利権の取得による多面的効果とその意義に関する研究
小泉 恒紀中井 検裕沼田 麻美子
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 53 巻 3 号 p. 431-438

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抄録

水質、景観、生態系等に関する水利権として制度化された環境用水は、想定されている効果の他に、用水としての現代的な多面的効果を発揮し、市民という新たな受益者の顕在化により、用水及び地域の持続性へ寄与する可能性を有する。これを踏まえ本研究は、環境用水が用水及び市街地へ与える多面的効果を明らかにし、今後の環境用水のあり方を考察することを目的としている。環境用水水利権の取得地区3件にて調査を実施した結果、水利権取得のために実施された市民参加プロセスが市民主体の人的ネットワークを構築し、通水後は流域における新規及び既存主体の協働により、新たな活動や効果が連鎖的に発現している状況が明らかとなった。このことから環境用水は、かつて用水流域に存在していた水を利用する主体間の秩序やネットワークを、用水の通水や管理を通じて再構築し、現代的な多面的効果を用水流域へ創出する装置として捉えられる。環境用水による効果を最大化させるためには、環境用水に関する施策を水利権取得という目的に留まることなく、地域におけるまちづくりの手段として位置付けることが重要であり、それによる用水を軸とした流域ガバナンスの構築が期待できる。

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© 2018 公益社団法人 日本都市計画学会
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