抄録
近年、都市部における農地の価値が見直されてきており、2017年には新しい用途地域「田園住居地域」が創設された。これは、第1種低層住居専用地域の用途・形態規制に農業関連施設の建築許可と農地の開発規制を加えたものであるが、低層住宅地に限定した一律的な農地保全施策が市街地環境・農業環境双方にとって最適な農地配置に資さない可能性もある。そこで本研究では、生産緑地に限定せず都市農地全般を対象として、大都市近郊における農地の減少や転用の実態を把握し、都市農地保全施策に関連した土地利用計画上の課題を明らかにすることを目的とする。その際、農地の立地特性を捉える枠組みとして、用途地域指定の一般的な傾向を踏まえ、中高層市街地を目指す幹線道路沿いの「沿道農地」と幹線道路に囲まれた地区内に存在する「居住環境地区内農地」に区分して考察を行う。