都市計画論文集
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近代以降の字図復元からみた嬉野温泉街の河川沿い土地利用変遷
花元 康平三島 伸雄
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2018 年 53 巻 3 号 p. 653-659

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抄録

本研究では、河川沿いに立地する大規模温泉街の1つである嬉野温泉街に焦点を当て、近代以降の嬉野温泉街河川沿いの土地利用変遷を明らかにすることを目的とする。『土地台帳』、『不動産登記簿』と『嬉野町下野甲、下宿全図』の情報の比較、分析により当時の姿を復元し、土地利用、所有の変化からみた空間の史的実態の分析を行う。現在の嬉野川沿いの景観を象徴する建物、施設の形成過程を整理し、所有者の変化や筆界の変化(字の合筆、分筆)を字ごとに所有者変遷図としてまとめ、それらの情報をもとに年代ごとの復元字図の作成を行い、年代ごとの特徴を整理し、河川沿い土地利用の変遷の考察を行った。結果として、廃藩置県で結成された、嬉野温泉観光株式会社による土地の買収、昭和25年の和多屋別荘の開業に伴う、嬉野川周辺の土地の集約化、河川の利用規制が厳しくなかった頃の河川領域内での民間開発等の様子を明らかにすることができた。また、温泉街河川沿い空間における、民間による開発から行政による開発へ移行する一例を示すことができた。

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© 2018 公益社団法人 日本都市計画学会
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