2018 年 53 巻 3 号 p. 690-696
中国では近代的開発とともに歴史的環境が失われており、陝西省の西安市はその代表である。西安市は長い歴史を持つ都市であり、西安市の歴史的環境保全は中国の文化財保護制度の中でも極めて重要な課題である。更に、古城区は西安市名城制度の中心であり、最も重要な部分である。本研究は歴史的街区の現状を把握する事と歴史的環境に関する法律及び政策の整理から、現在の中国の歴史的環境の保護政策は曖昧なところが多く、改善の必要があることが分かった。また、古城区には高さ制限が定められているが、歴史文化街区内には違法建築だけでなく、既存不適格建築物も数多く存在する。これからの歴史的環境保全では既存不適格建築物に対する具体的な方策が必要である。現在、陝西省と西安市では法律の見直しが求められている。その際に、歴史文化街区の定義、具体的な保護施策、責任機関を明確にすることが重要である。更に、法規に基いた実行可能な保護計画とその遂行が求められる。