土木史研究
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津波被災後における市街地拡大への津波防潮堤建設の影響について
津波常襲地域の岩手県田老町を対象として
村松 広久安藤 昭五十嵐 日出夫赤谷 隆一
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1991 年 11 巻 p. 85-94

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抄録

津波常襲地域と呼ばれている岩手県沿岸部三陸地方は、太平洋トラフに沿っているという地理的条件と、津波振幅を増大させる大小の湾が入り組んだ複雑な海岸地形であるため、常に津波の危険につきまとわれているという宿命をもっており、津波による被害は有史以来90回にもおよぶという。
なかでも、岩手県田老町は生存者わずか36人と、ほぼ全減の状態になった明治29年三陸大津波と、再び町の機能が失う程の被害を受けた昭和8年の津波の2度の大きな津波被害があった。そこで、昭和9年から昭和54年の3期にわたり、町を2重に取り巻くX字型の日本最大の規模を誇る総延艮2, 433m、高さ、海抜10mの大津波防潮堤が建設された。
第1期の津波防潮堤を建設し旧市街地の山側に復興した市街地は、西の山側へ向かう道路とこれに直行する道路より成る格子型道路網として数多くの避難路を設けた。また第1期の津波防潮堤建設により市街地南部を流れる田老川の流路が安定し、市街地の東側を流れる長内川の川筋と併せて津波緩衝地帯を設けることができた。
しかし、2・3期と津波防潮堤を増設した結果、高地移転から結婚・分家、土地不足、仕事上の利便性、防災意識の風化などの要因によってしだいに市街地が拡大した。加えて長内川支川の増水時における市街地への氾濫・海の眺めが悪くなったなどの住環境や、交通に対する障害などの都市機能面での障害が伺われるようになった。
津波防潮堤建設はこれまで治水の効果のみが評価されていたが、本研究の結果、津波防災意識の風化をもたらしながら市街地を拡大させてきたということが実証的に明らかになった。

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