土木史研究
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辰巳用水から見た地磁気偏角
青木 治夫
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1991 年 11 巻 p. 95-100

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抄録
辰巳用水は、1632 (寛永9) 年、当時の先端技術であった隧道に横穴を用いて掘り、かつ末端で木管による逆サイフォン工法を用いた遺存状態のよい用水である。
1981年、総合学術調査が行われた際、隧道区間の実測が行われ、区間別の建設年代が明らかにされ、鉱山との関係が論じられた。その実測図によると、相互横穴間にある隧道は、主として三線からなり、それを結んだ線形が特長のある折線形状を示していた。
近世初期わが国では、方向は磁石で求めていたから、寛永期隧道で隧道方向設定の基凖とした横穴の中心線実測方向角によって、用いられた磁石の伝来系統と方位数を調べてみた。それには地磁気偏角値が必要であり、実測値ではないが、考古地磁気学による寛永期の金沢における偏角、東偏8.3°を用いて試算してみたところ、中国系の48方位刻み磁石を用いていたことが分かった。近世中期になって、鉱山技術が記述され始めたが、その史料によると、鉱山では中国系磁石を使用していたことが明らかで、両者の技術の類似性が確かめられた。
隧道中心線の折線の集合は、48方位の7.5度刻みの磁石で方向設定したため生じたものであろうが、隧道設定に関する文献にも論究を加え、かつ試算法の応用について述べる。
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© 社団法人 土木学会
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