1997 年 14 巻 p. 269-276
本研究では、近年の地価の急騰およびその後の下落という、地域間の地価変動の空間波及構造を明らかにすることを目的として、都道府県別の対前年平均地価変動率を指標として、多次元尺度構成法 (MDS) を用いて分析を行った。その結果、地価変動が東京都を発端として、首都圏、近畿圏、地方中枢都市を含む県、その他の地方圏へと、順に遅れを伴いながら波及したこと、商業系の地価変動が住居系に若干先行して生じていたことなどが明らかになり、従来から一般に言われていた地価変動の波及の傾向であり、既に我々が研究を行って実証した結果と一致する結果を得た。また、MDSの適用によって得られた地域の空間分布について、多変量解析による要因の検討を行い、地価変動の波及における遅れの要因が最も強く関連していることを明らかにした。