抄録
軽度から中程度 (ISACHCクラス Ia~II) の慢性心臓弁膜症罹患犬12頭に対し、心臓病用療法食 (療法食) を12週間にわたり給与した。療法食開始前、そして療法食開始4、8 および12週間後にナトリウム (Na)、アルドステロン (Aldo)、心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP) およびN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド (NT-proBNP) の血漿濃度を測定し、さらに胸部X線検査および心エコー検査を実施した。その結果、Naは療法食開始後に軽度に低下する傾向がみられたが、有意な変化ではなかった。療法食開始後のAldoは 4 週間後に上昇したが、有意な推移ではなかった。ANPおよびNT-proBNPの血漿濃度、加えて、胸部X線検査および心エコー検査の数値にも有意な変化は認められなかった。以上の結果から、軽度から中等度の慢性心臓弁膜症罹患犬に療法食を導入しても、神経体液ホルモンは活性化せず、心形態は変化しないことが確認できた。