抄録
近年、炎症性腸疾患(IBD)の病態や治療に関連して、腸内細菌叢や消化管粘膜の免疫寛容などに関しての関心が高まっている。しかしながら日本国内において、プロバイオテ ィクスやプレバイオティクスの投与が動物の消化管に及ぼす影響に関する基礎的な研究は限られている。本研究では健常犬6頭にビフィズス菌・乳酸菌製剤(ビヒラクチンDXTM)およびサイリウムを2週間投与し、投与前、投与後の腸内細菌叢および制御性T細胞(Treg)数の変化について検討した。腸内細菌叢の解析では、投与後にFirmicutes門が減少し、Fusobacterium門およびBacteroides門の菌の構成比が増加していた。また6頭中5頭で、投与後の細菌構成比が類似したパターンへと変化したことが明らかとなった。しかしながら消化管粘膜におけるTreg数については、有意な差は認められなかった。今後はTregの制御に関わるとされる短鎖脂肪酸の解析も実施し、プロバイオティクス投与にともなう健常犬の腸内環境の変化についてさらなる検討を進めていく予定である。