ペット栄養学会誌
Online ISSN : 2185-7601
Print ISSN : 1344-3763
ISSN-L : 1344-3763
原著論文
イヌのリンパ球形質細胞性腸炎における低マグネシウム血症が重症度や予後に及ぼす影響
酒居 幸生鳩谷 晋吾古家 優島村 俊介鍋谷 知代谷 浩行嶋田 照雅
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 24 巻 1 号 p. 1-13

詳細
抄録

ヒトの炎症性腸疾患において、血中マグネシウム濃度は一部の患者で低下し、腸炎の重症度と負の相関を示す。ヒトと同様に、イヌのリンパ球形質細胞性腸炎(LPE)においても低マグネシウム血症が認められるが、病態との関連は不明である。そこで本研究では、イヌLPE症例における血中マグネシウム濃度を測定し、腸炎の重症度や予後との関連を検討することを目的とした。病理組織学的にLPEと診断されたイヌ35頭を組み入れた。診断時における腸炎の組織学的重症度(軽度、中等度または重度)、イヌ炎症性腸疾患活動性指標(CIBDAI)、イヌ慢性腸症活動性指標(CCECAI)を評価し、血清中マグネシウム濃度との関連を検討した。また、低マグネシウム血症の有無で症例を2群に分け、診断後の生存期間を比較した。低マグネシウム血症は22頭(63%)で検出された。血中マグネシウム濃度は腸炎の組織学的重症度、CIBDAIおよびCCECAIと負の相関を示した。低マグネシウム血症の有無で症例の生存期間に有意差は認められなかった。以上のことから、イヌLPE症例における血中マグネシウム濃度は腸炎の重症度を反映しており、バイオマーカーとして有用であると考えられた。

著者関連情報
© 2021 日本ペット栄養学会
次の記事
feedback
Top