抄録
飼料由来のチアミンを欠乏させたマウスに,過剰なグルコースを腹腔内投与することで,マウスの学習行動にどのような影響が出るかを検証した。オープンフィールド試験において,立ち上がり回数をパラメーターとすると,チアミン欠乏により学習成績は低下した。しかし,移動距離についてはチアミン欠乏マウスにグルコースを投与することで24時問後に移動距離は減少し学習成績が改善されるという結果になった。また屠殺後,大脳皮質と海馬を摘出し,神経伝達物質であるモノアミン類およびそれらの代謝産物を測定した。今回の学習成績と神経伝達物質の間に相関はなかった。また,立ち上がり回数と移動距離は異なる反応を示したことから,栄養の影響は行動の種類によって違い,二つの行動は別々のメカニズムで制御されている可能性が示唆された。